戸籍の改名をしたいと思ったときに、やり方を調べて一番最初にぶち当たるのが『使用実績』ではないでしょうか。
法律に詳しくないと、『使用実績』が具体的に何を意味するのかがわからないんですよね。
要は、既に新しい名前で生活してますよって証拠のことなんですが、それでもピンとこない。
「法的に認められる前に、新しい名前を勝手に名乗るのが先」っていうのも戸惑います。
違法になりそうでなんとなく怖い。
名前は変えたいけど、それを周囲に言うのは恥ずかしいから、バレずにしれっと変えたいと思ったのは私だけじゃないはず。
まあでも、そんな方法はないので、改名したいなら地道に使用実績を集めましょう。
(周りに内緒で戸籍の名前が変更できたら、悪用し放題ですもんね…。)
そんなこんなで2019年に家庭裁判所で改名が認められたときのことを、備忘録も兼ねて書き残しておきます。
通称名とは?
通称名とは、実名とは別に世間一般で使用している名前のことです。
例えば、戸籍上の名前は「山本一郎」でも、「山本健太」と名乗って生活している場合は「山本健太」が通称名になります。
名字も通称名が使えます。
戸籍上の氏名が「山本一郎」でも、「鈴木明」と名乗って生活できます。
私はこのパターンでフルネームを通称名にしていました。
使用実績って何?
通称名を使用している証拠のことです。
永年使用を事由に改名する場合、通称名の使用年数が重視されます。
広い範囲で通称名が浸透していることも重視されるので、身の回りで通称名が使えるものがあれば、できるだけ証拠を残しておきましょう。
日付だけでなく、住所も記載されているとなお良いですね。
通称名を使うのは犯罪?
通称名を使うこと自体は犯罪にはなりません。
ただし、悪用厳禁です!
犯罪目的で使用すれば、罪に問われる可能性はもちろんあります。
それから、履歴書や契約書など、公的な書類に通称名を記載すると私文書偽造罪にあたる可能性もあります。
トラブルを防ぐためにも、事前に相手に了承を得ておきましょう。
通称名が使えるもの
- 手紙や年賀状などの郵便物
- 公共料金の明細書
- ネット通販の伝票
- 成績表、卒業証書
- 学生証、社員証
- 給料明細
- 名刺
- 健康保険証
- 診察券
- 自治体の図書貸出カード
- 民間資格の証明書
- 定期券
- 賃貸借契約書
- 障害者手帳
- 自立支援医療受給者証
- 障害福祉サービス受給者証
- 生活保護受給者証
- 銀行口座名義
通称名の使用については規定がありません。
使えるかどうかは職場や担当者などの各機関の判断によります。
原則として、本人確認の必要なものは通称名が使えないことが多いです。
通称名に変更しやすいもの
上記に挙げた中で、変更の際に本人確認がいらないものがこちらです。
- 手紙や年賀状などの郵便物
- 公共料金(電気、ガス、水道)の明細書
- ネット通販の伝票
公共料金の名義やネット通販の登録名は、電話やネットからでも変更できるので、まずはここから通称名の使用実績を作るのがおすすめです。
通称名で郵便物を送ってもらう際に、郵便局で何か手続きをする必要はありません。
住所が正しければ通称名でも配達されます。
通称名が使えないもの
住民票の氏名に紐づいているものは通称名が使えません。
- マイナンバーカード
- 年金手帳
- 障害年金受給者名、障害年金振込先の口座名義
- 日本学生支援機構奨学生名
これらの名前が変更できるのは、戸籍の改名が認められてからになります。
使用実績はどれくらい必要?
- 成人:5〜10年
- 子供:3〜5年
「◯年使用すれば変更できる」と一概には言えませんが、期間が長いほど変更が認められやすいです。
私が改名を申し立てたときは、参与員の方から「成人の場合は7年が目安」と言われました。
使用期間が短いのに焦って改名を申し立てても、取り下げを求められる可能性が高いです。
地道に通称名の使用実績を集めましょう。
使用実績の保管方法
保管方法の決まりは特にありません。
改名を申し立てるためには数年分の使用実績が必要なので、一ヶ所にまとめておくと管理がしやすいですね。
個人的にはノートに貼るのがおすすめです。
- 使用実績が時系列順にわかる
- こまごました使用実績を紛失しなくて済む
改名を申し立てるときは、原本の返却はされないので、コピーを取って提出しましょう。
通称名を途中で変えた場合、トータルの使用期間で使用実績として認められる?
残念ながら認められません。
どんなに本名を使用していない期間が長くても、最終的に変更したい通称名の使用実績で判断されます。
仮に、Aという通称名を3年間使用した後、Bという通称名に変更して5年間使用したとします。
通称名を使用した期間は8年間ですが、途中で通称名をAからBに変更しています。
本名からBへの改名を申し立てた場合、使用実績として認められるのはBを使用した5年分のみです。
まとめ
正直、最初のうちは通称名が使える範囲が狭いです。
でも、できる範囲から少しずつ使用実績を集めていけば、その使用実績を使って、職場や病院など、通称名の使用を交渉できる範囲が広がります。
永年使用での改名が認められるには、
「周囲から通称名で認知されているので、むしろ戸籍の名前のほうが本人だと認知されない!」
という状態になるのが一つの目安です。
時間はかかりますが、コツコツと使用実績を積み上げていきましょう!