図書館に棲みたい。
本が好きで、図書館も好きだと、そう思うのは必然の流れです。
いついかなるときも本がないと生きていけない我々にとって、読書は趣味ではなく生活の一部。
「さあ、読もう」じゃなくて、常に手元にあるもの。
読むかどうかわからなくても、鞄に本を入れてから外出するのが本の虫。
引っ越す際も、「近くに図書館はあるのか? 蔵書数は?」と調べることでしょう。
なぜなら我々は、読まないと息ができなくなる生き物だからです。
そうして常に本のことばかり考えていると、やがて図書館に棲みたくなります。
数週間おきに貸借を繰り返すのではなく、いっそ棲息したい。
しかし、現実問題、図書館の住人になるのは容易ではありません。
私財を注ぎ込んで自前の図書館を作れば解決ですが、なんせ私は生活保護。無い袖は振れないのです。
それに、図書館ならなんでもいいのかというと、そういうわけでもありません。
だって、図書館ですよ?
本が集うこの世の楽園です。
外観や内装も含めて図書館という物語なんです。
図書館に棲むのが難しいなら、せめて図書館を巡りたいと願うのが人の性。
日本全国、世界各地の図書館を訪れ、そのへんのすみっこで毎日本を読む姿を空想したい。
その土地の本好きが集う空間に触れたい。
一秒でも多く、本に囲まれた人生でありたい。
そんなわけで、私の『人生でやりたいことリスト』には、いつか訪れたい図書館の名前が羅列してあるのです。
梅田駅×方向音痴
図書館には特集コーナーがあります。
テーマごとに並ぶ本も変わり、ついつい引き寄せられるこの一角。
『日本の最も美しい図書館』に出会ったのもここでした。
これは運命です。
読むしかありません。
ページをめくると、個性ある図書館が見開き写真とともに紹介されており、気分は小旅行です。
家にいながらにして図書館巡りができるなんて素晴らしい。
ちょっと富豪になって片っ端から訪れたい気分です。
中でも目に留まったのが大阪府立中之島図書館。
とっても行きたい。
重厚なファサードをこの目で見たい。
吹き抜けの円形ドームを見上げたい。
ただ、実際に行くとなると懸念点があります。
梅田駅です。
柚木麻子の小説『3時のアッコちゃん』を読んで以来、方向音痴の私は一人で梅田駅には行くまいと心に決めていました。
「新宿駅や東京駅なんてかわええもんや。ここは東西南北の感覚だけではなく、階層を読みとる感覚も要求される、世界に誇る巨大ラビリンスなんやから」
「ゆるういスロープやら短い階段やら、階層を混乱させるトラップがあらゆる場所に仕込まれとって、あんたも知らんうちに、上がったり下がったりしてるんや。三次元の方向感覚が必要になる」
引用:3時のアッコちゃん|柚木麻子
なんて恐ろしいところなんだ梅田駅。
でもこの駅を経由しないことには大阪府立中之島図書館には行けません。
こういうときはノリと勢いに限ります。
一時間ほど迷子になると想定し、覚悟を決めて出かける。
それが方向音痴の生き方です。
大阪府立中之島図書館
ほら見てください! やり遂げましたよ!
梅田駅の外に出られず15分くらい迷子になりましたが、着けばいいんです!
駅から出たらこっちのものです!
ありがとうGoogleマップ!
本で見たとおりの建物が存在する。
それだけでなんだか感動します。
本の世界に入り込んだみたいで嬉しくなります。
私は現実と空想だったら断然空想が好きです。
現実よりも、夢と安らぎのある幸せな空想だけに浸って一生を終えたいです。
でもこうして足を運んでみると、現実も悪くないなと心が揺れるので、図書館は偉大ですね。
そう、これ!
この階段と、天井のステンドグラス!
これが図書館だと言われると、無性にわくわくします!
しばらく意味もなく階段をくるくる行き来しました。楽しい。
私が好きな小説や一般書が置いてある図書館とは違って、大阪府立中之島図書館の蔵書は古文書やビジネス関連の書籍等がメインのようです。
お堅い雰囲気なのかと思いきや、名探偵コナンの作中に登場したことがあるそう。
該当ページが大きく展示してあり、親しみを覚えました。
本のページ越しでは味わえなかった一面です。
前日までは、本当に自分が大阪に行くのか実感が湧かなかったですが、行ってよかったです。
修学旅行じゃなくても来れるんですね。
心の赴くままに図書館周辺も散策したら、両足の裏に靴擦れができて、3日間足を引きずって歩く羽目になりました。足、お疲れさま。
「生活保護の身分でそんなことにお金を使うなんて言語道断だ!」というご指摘はごもっともです。このブログを収益化して税金を払えるようになる日まで、どうか大目に見てください。
夜旅堂は必ずや這い上がります。