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改名・改姓の面談は何を聞かれる?【申し立て後の流れと質問内容】

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家庭裁判所に改名・改姓を申し立てた後、審判書が届いて手続きが終了する場合もあれば、「もう少し詳しく話を聞かせてほしい」と面談を求められる場合もあります。
今回は、改名・改姓の申し立て後から面談までの流れを、私の体験を交えてお話しします。

普段なじみのない家庭裁判所に行くのは緊張しますよね。
この記事を読んで、申し立て後の流れや面談当日の雰囲気が少しでも伝われば幸いです。

申し立て後から面談まで

家庭裁判所に申立書を提出した後、面談が必要な場合には家庭裁判所から連絡があります。
電話で面談の日時を調整した後、審判期日通知書が送られてきます。
以下のような書類ですね。

この審判期日通知書に、面談の日程や場所、面談当日の持ち物が記載されています。
忘れ物のないよう、面談当日までに準備を整えておきましょう。

家庭裁判所からの連絡がいつ来るかは管轄によって異なります。
早ければ数日、長ければ数週間程度かかります。

私は1ヶ月経っても何も音沙汰がなく、こちらから連絡をして、その場で面談の日程が決まったことがありました。
改名の審理期間は約1ヶ月程度ですが、もし何も連絡がなくて不安な場合は、進捗状況を確認するために電話で問い合わせても問題ありません。
追加で必要な資料の提出を求められることもあるので、速やかに対応できます。
問い合わせることで裁判で不利になることはないので安心してくださいね。

面談当日

面談は時間厳守で向かいましょう。
できれば事前に家庭裁判所の場所やルートを確認しておくと良いですね。

10〜15分前に到着して受付を済ませるのが理想的ですが、交通手段によってはちょうどいい時間に到着するのが難しいこともあります。
早く着きすぎてもいいように、近くで時間を潰せそうなお店や建物があるか調べておくのもおすすめです。
面談当日は緊張するので、時間に余裕を持って行動できると安心です。

面談に行けなくなったときは、担当の書記官に連絡しましょう(審判期日通知書の下の方に、書記官の名前と電話番号があります)。
その際、必ず審判期日通知書に書いてある事件番号を伝えてください。

服装

面談時の服装に特に決まりはありません。

スーツや学生服があれば、それが一番無難です。
「この服装で大丈夫だろうか、面談にふさわしいだろうか」と悩まなくて済みます。

もちろん、私服でも問題ありません。
私自身、スーツを持っていなかったので、普段着とスニーカーで面談に臨みました。

受付後に待合室に通されましたが、スーツの方や私服の方、どちらもいました。
フォーマルな服装でないことを理由に改名が却下されるとは考えにくいので、あまり心配しなくても大丈夫です。

持ち物

  • 審判期日通知書
  • 印鑑(認印でOK)
  • 身分証明書
  • 通称名の使用実績
  • その他、改名・改姓を求める理由を裏付ける資料

面談当日に必要な持ち物は、審判期日通知書に記載されています。
また、家庭裁判所から追加で提出を求められた資料があれば、忘れずに持参しましょう。

通称名の使用実績については、申し立て時にコピーを提出しますが、家庭裁判所によっては原本の確認を求められる場合があります。事前に指示がなければ原本は必要ないこともありますが、念のため持参しておくと安心です。
さらに、申し立て後に新たに通称名を使用した実績があれば、このタイミングで持参しても構いません。

精神的苦痛を理由に改名・改姓を申し立てた場合、医師の診断書や意見書があれば、併せて提出しましょう。

受付から面談まで

審判期日通知書に記載された受付に行き、面談に来たことを伝えます。
待合室に案内されるので、面談の時間になるまでそこで待機します。
面談の時間になると参与員に呼ばれ、個室で面談が始まります。

『裁判所で面談』と聞くと、テレビで見るような法廷や裁判官が3人並んでいる物々しい雰囲気を想像するかもしれませんが、実際は参与員との面談です。
私の面談のときは、フレンドリーで話しやすい女性の方でした。

裁判官は常に複数の事件を抱えているので、改名・改姓の面談で直接話すことはありません。こちらから裁判官に伝えたい内容があれば、適宜、参与員が伝えます。
(判断が難しいケースなど、裁判官や書記官と直接面談することも稀にあります)

面談の様子・質問内容

面談の内容は人によって異なるため、ここでは私自身の体験を基にお話しします。

面談が行われた個室は長テーブルが2台あり、その周りにパイプ椅子が8脚並んでいました。参与員とはテーブルを挟んで座り、1対1での面談でした。

質問については決まった内容があるわけではなく、申立書の内容に沿った質問がされるようです。
私は親からの虐待を理由に改名・改姓を申し立てたのですが、参与員の方が質問の都度、「答えにくいことかもしれませんが」と気を遣ってくださり、本当にありがたかったです。

主な質問内容
  1. 改名・改姓を申し立てた理由や経緯
  2. 通称名の使用実績
  3. 家族の同意・周囲への影響
  4. 新しい名前の由来
  5. 元の名前に戻したくならないか
  6. その他

1.改名・改姓を申し立てた理由や経緯

申立書を見ながら、内容を確認する形で行われました。

戸籍の氏名の変更をするには、改名・改姓をしないと社会生活に支障があると認められなければなりません。個人の感情や好みだけでは足りないとされています。

私は面談で、幼少期からの虐待が改名・改姓の申し立てとどうつながるのかを説明しました。
たとえば、『戸籍の氏名を見るだけで虐待の光景がフラッシュバックするから』だけでは、社会生活において具体的にどのような支障が出ているのかわかりません。
『名前を呼ばれるだけで虐待の記憶が思い出され、相手に対して敵意や警戒心を抱いてしまい、安定した人間関係を築けない』
『氏名を書くときに手が震えてしまい、履歴書を書くこともままならない』
など、学業や仕事への支障を伝えました。
そして、通称名を使用しているときには上記の症状が起こらないことから、改名・改姓により状況の改善につながるとアピールしました。

また、虐待の証拠が残っていなかったため、医師の診断書に以下の内容を記載してもらいました。

  • 幼少期から親や家族に虐待を受けて育ったこと
  • 親や家族を想起することにより精神症状の著しい悪化を来すこと
  • 戸籍の氏名の使用が、親や家族の想起につながっていること
  • 精神症状の安定化のために改名・改姓が必要であること

自分の主張だけでなく、診断書にも虐待の事実や改名・改姓の必要性を記載することで、客観的な証拠を示しました。

2.通称名の使用実績

通称名をいつから・どれくらいの範囲で使用しているのか確認があります。

私が改名を認められた際の面談では、申し立て時に提出した使用実績の資料を見ながら、
「一番古いものはこれですね。◯年使用しているんですね」
「手紙も通称名で届いているんですね」
と口頭で確認された程度で、さらっと終わりました。

使用実績が少ない場合は、他にも通称名を使用している証拠がないか聞かれることがあります。

よく、『メールやSNSのやりとりは証拠として弱い』という情報を目にします。
たしかに、郵便物や公共料金の領収書と比べて、メールやSNSは編集や改竄が可能なため、証拠としての信頼性が低いと見なされがちです。
しかし、実際は裁判官によって判断が異なるので、必ずしも証拠として使えないわけではありません。友人とのSNSのやりとりで通称名を呼ばれている会話履歴が証拠として認められ、改名できたケースもあります。

年賀状のやりとりが減り、ペーパーレス化が進む昨今、紙媒体での使用実績は集めにくくなっています。「使用実績が足りないのでは」と不安に感じる方も少なくないでしょう。
それでも、どんなものが有利に働くかは、実際のところやってみないとわかりません。
「もう他に有利になりそうな証拠がない」と自己判断で諦める前に、ささいな証拠でも、使用実績として認められないか確認してみましょう。

どんな使用実績も、単体で強力な証拠となることは少ないですが、他の証拠と組み合わせることで『広い範囲で通称名が浸透している』と判断されやすくなります。
最後まで諦めず、できる限り多くの証拠を集めてみることをおすすめします。

3.家族の同意・周囲への影響

改名・改姓をすることに親や家族は同意しているか、職場や友人への影響がないか聞かれます。

私は虐待の影響から親や身内に対して住民票の閲覧制限をかけていて音信不通であることや、分籍して自分一人の戸籍であるため特に影響がないことを話しました。

また、周囲からは新しい氏名で認識されており、通称名の使用実績にもあるように年賀状やメールが新しい氏名で届いていることを伝え、改名・改姓をしても周囲への混乱が生じないことをアピールしました。

もちろん、家族が積極的に改名を応援してくれている場合は、そのまま伝えて構いません。
既に職場で通称名を使用している場合は、その旨を伝えることで、改名後に社会的な混乱は生じないと説明できます。
仮に現在は本名で勤務しているとしても、「転職を予定しており、それまでに改名を済ませたい」といった希望がある場合は、それを正直に伝えるのも一つの方法です。

4.新しい名前の由来

なぜその名前にしたのかを聞かれました。

私は敢えて、中性的な漢字や読みにくい名前にこだわったので、
「その名前だと見た目の性別と合わないのではないか」
「もう少し読みやすい名前にした方が良いのではないか」
という旨の質問を受けました。

正直、「そんなこと言われても」と面食らいましたが、男性らしさや女性らしさに偏った名前だと虐待の内容を思い出してしまうことや、あまり見かけない読み方ではあるが名乗り読みとして存在することを伝えて乗り切りました。

もし、『奇妙な名である』『異性とまぎらわしい』といった事由で改名を申し立てる場合は、新しい名前が申し立て事由と矛盾していないか確認したほうが良さそうですね。

また、ネガティブな内容だけでなく、「過去は変えられないが、これからの人生を新しく築いていくために、前向きな意味を持つ字を選んだ」というポジティブな内容も伝えました。

5.元の名前に戻したくならないか

「もし新しい名前になった後、『やっぱり前の名前に戻したいな』と思うようなことはありませんか?」
と聞かれたので、「それはないです!」と即答しました。

改名が認められて数年経ちますが、やっぱりないです。

それなりの理由があって改名を決め、数年に渡って通称名を使い続けるわけなので、途中で心変わりするようなら申し立てまではしないと思うんですよね。
改名したからといって、元の名前がなかったことになるわけでもありません。
思い出して懐かしくなることはあっても、それを理由にまた戸籍の名前を変えたいと思うかは別の話です。

6.その他

性別への違和感を口にしたことで、
「あなたは異性になりたいんですか?」
「見た感じ、性別の移行をされているようには見えませんが、なにか治療をする予定はあるんですか? 他の方は、手術をしていたり、ホルモン治療で見た目がだいぶ変わっていたりするんですが、そういったことはされていますか?」
という質問もされました。
改名の可否を判断する材料に、見た目や治療状況が含まれることもあると知って驚きました。

私の場合、性別に対する違和感は親からの性的虐待の影響が捨てきれないのですが、面談の場でそんなややこしいことを言っても不利になるだけだと判断し、敢えて正確な説明はしませんでした。
「『なりたい』とは違うんですが、『本来あるべき状態に戻りたい』という感覚に近いです。ガイドラインに沿って治療を進めているので、まだ身体的な治療はしていませんが、今後手術をしたいと考えています」
と、それらしいことを答えてしのいだ記憶があります。

その他、過去の犯罪歴や借金の有無を聞かれることがあります。
改名の目的が犯罪歴の隠蔽だったり、借金の返済逃れだったりしないか、確認するために質問されるようです。

面談が必要=改名が許可されない可能性が高い?

面談が必要かどうかはケースバイケースです。
裁判官によっても判断が異なりますし、必ず面談を実施する方針の家庭裁判所もあるようです。
面談を求められたからといって、「もしかして認められない可能性が高いのかも」と身構える必要はありません。
家庭裁判所から、「今回は認められない可能性が高い」と事前に連絡があったとしても、実際に面談を受けて許可が下りたケースもあります。

面談は、自分の思いを直接伝えられる貴重な場です。
不安もあるかもしれませんが、どうか最後まで諦めず、自分の気持ちを悔いなくしっかり伝えてください。

まとめ

今回は改名・改姓の面談について、申し立て後から面談当日までの流れを紹介しました。

実際の面談は人それぞれで、10分程度で終わることもあれば、一度では判断が下されず、再度面談を重ねるケースもあります。

この情報が、少しでも面談のイメージにつながり、これから改名・改姓を考えている方の参考になれば嬉しいです。